私が変われば周りも変わる

  • 2019.09.11 Wednesday
  • 10:28

以下は、10年前に“介護現場の管理職”を対象に開催した「マネジメント研修会」にお招きした講師の話です。

 

随分と時が経っているので参考になるかどうかは分かりませんが、ご興味のある方はお目通し願います。

 

 

「私のマネジメントの流儀〜私が変われば周りも変わる〜」

 

私は現在、保険会社で50名の部下を預かる“エリアマネージャー”の職務に就いています。

 

仕事は順調で、エリアの実績も全国上位に位置しています。

 

お陰様で順風満帆です、と言いたいところですが、一寸先は闇でございまして、この先も好調を維持できるかどうかは分かりません。

 

ただ、部下たちが頑張ってくれる以上、私もそれに応えて、彼らが働きやすい環境づくりに尽くすつもりです。

 

と、まあ、こんなセリフを申しますと、「良いマネージャーさんですね。そんな人の下で働く人たちは幸せですね」などと歯の浮くようなことを言われることもあります。

 

実際には部下たちに聞いてみないと分かりませんが、私は決して良いマネージャーではありません。

 

時にはきついことも言いますし、実績が上がらない部下には厳しく指導することもあります。

 

部下も千差万別で、何も言わなくても自発的に行動する部下もいれば、同じ指示を繰り返し出しても動かない部下もいます。

 

勘が鋭くて要領の良い部下もいれば、一生懸命頑張っても成果が上がらない不器用な部下もいます。

 

中には反抗的な部下もいて、そんな彼らとの日常は良くも悪くも刺激的で、たまにはアドレナリンが噴き出して我を忘れてしまう瞬間もあります。

 

その度に自分を見つめ直して反省する、そんなことの繰り返しです。

 

ただ、私たちのエリアは、今でこそある程度の実績を上げられるようになっていますが、ほんの数年前までは全国でも最下位辺りをウロウロしていました。

 

ここからは、その当時の話をしてみたいと思います。

 

数年前のことです、当時のエリアの実績は全国で下から2番目、少しでも気を抜くと最下位に転落する危機的な状況にありました。

 

そんな状況の中で、私は前任者からエリアマネージャーの職務を受け継ぎました。

 

就任当初の私の目標はエリアの実績を全国上位に引き上げること。

 

そのためには、部下たちに頑張ってもらわなくてはいけません。

 

しかし、当時の部下たちは低調な実績に慣れてしまっていて、覇気もなく日々同じような業務を繰り返しているだけでした。

 

そんな彼らの様子を見て、あることに気付きました。

 

まず、時間を守らない社員が多い。

 

半数近い社員が朝礼の最中に出社し、何食わぬ顔でその輪に加わる。

 

次に、整理整頓ができていない。

 

大切な書類がデスクの上に不用意に置かれていたり、色んな書類が山のように積み上げられていました。

 

そして、挨拶がなっていない。

 

外部からお客様が来られても、自分のクライアントでなければ素知らぬ顔をして挨拶をしない。

 

そんな社員を誰が信頼するのか、こんな杜撰な会社を誰が信用するのか。

 

信用も信頼も得られるはずがない。

 

だから、こんな実績しか上げられないのだ。

 

そこで私は社員の意識改革に尽力する決意を固めました。

 

まず、朝礼の時間は厳守することを強く求めました。

 

そして、自分たちの身の回りは常に整理して清潔を保つよう指示し、挨拶の徹底を義務付けました。

 

その効果はすぐに現れ、朝礼に遅れる社員は激減し、社内も整理整頓がされて気持ち良く働ける環境が整い、挨拶もきちんとするようになりました。

 

「何だ、やればできるじゃないか」と思い、「この調子なら実績が上向くのも時間の問題だな」と期待に胸を膨らませました。

 

ところが、それから数か月後、私たちのエリアの実績は全国最下位になってしまいました。

 

私は頭の中が混乱しました。

 

就任当初と比べて、社員の動きは見違えるほど良くなっている、それなのに実績が伴わないなんて意味が分かりませんでした。

 

そこで、社員一人ひとりと面談をし、どこに問題があるのか確認しようと思いました。

 

そうして、あることが分かりました。

 

行動は変わっても、意識は変わっていなかったのです。

 

朝礼の時間は守るようになった、整理整頓を心掛けるようにもなった、挨拶もきちんとするようになった、でも、それは私に厳しく指導されたから従っただけ。

 

しかも、全国最下位という実績に対して、ほとんどの社員が何とも思っていませんでした。

 

毎月の給与が貰えたらいい、そういう意識でした。

 

私は愕然とし、ついに堪忍袋の緒が切れて、「分からないなら分からせてやろう」という意識が芽生えました。

 

それまでの私は、部下たちに“分かってもらおう”と努力していました。

 

日々の朝礼では成功者たちの教訓を交えながら意識改革とモチベーションアップに努めましたし、業務の合間には雑談を通じて仕事に取り組む姿勢、情熱、プライドなど、私の頭の中にあるもの全てを伝えてきたつもりでした。

 

でも、それが全く伝わっていなかった、分かってもらえていなかった。

 

とても残念で悔しい気持ちになりました。

 

そうして、“分からないなら分からせてやろう、自分たちの考えの甘さを思い知らせてやろう”と思うようになり、言葉はきつく、口調は強く、態度は威圧的になっていきました。

 

それでも、分かってもらえない。

 

それどころか、多くの部下が私との接点を避けるようになり、中には精神的に参ってしまい体調不良を訴えたり、退職する部下もいました。

 

私の指導方法に意見を言ってくる部下もいましたが、私は自分が間違っているとは思いませんでした。

 

私は部下のためを思って嫌なことを言っているのだから、感謝されることはあっても、責められる覚えはないと思っていたのです。

 

しかし、実績は一向に上がりませんでした。

 

それどころか、全国最下位が定位置になりつつありました。

 

本当にもう、どうしたら良いのか分からなくなって、会社に行くのも、社員と接するのも面倒だと感じるようになりました。

 

そんな時、救いを求めて読み漁っていた本の中に書いてあった文章が目に留まりました。

 

そこには、「自分は変えられても他人は変えれれない」、「人は自分と異なる意見を持つ者に意識を奪われやすい」、「大切なことは自分と違う意見の者を屈服させることではなく、それ以外の人たちに自分の意見を理解してもらうことだ」という趣旨の文が綴られていました。

 

私はそれを見てはっとしました。

 

私はこれまで、私の考えを理解しない者、私の思う通りに行動しない者ばかりに目を向け、彼らを屈服させようとしていた。

 

そうして、自分のやりたいことだけにしか目を向けず、彼らを理解しよう、彼らの能力を活かそうとはしていなかった。

 

結局、一方通行だった私の意識や考えが彼らを萎縮させ、エリアの実績を悪化させていたのだ。

 

そこに気付き、私は猛省しました。

 

彼らに変化を求めるだけではなく、私も彼らと一緒に自分自身を変える努力をしなければいけなかったのです。

 

翌日、私は朝礼で深々と頭を下げ、部下たちに詫びました。

 

そして、このエリアを良くするため、みんなの力を貸して欲しいと頼みました。

 

部下たちの反応は鈍く、それに呼応する者はいませんでした。

 

それは、そうですよね。

 

昨日までは厳しいことばかり言ってた上司が、今日からいきなり変わるなんて信じられませんよね。

 

しかし、私は自分を変える決意をしていたので、部下の信頼を得るまではどんな努力も惜しまないつもりでした。

 

まず、部下たちへの挨拶は私の方から率先してするようにしました。

 

些細なミスはドンマイの精神で笑い飛ばし、部下のやる気が失われないようにしました。

 

いつもは私が一方的に講釈を述べていた日常会話も、冗談を言って気分転換の時間になるようにしました。

 

最初は私の変化を気持ち悪がっていた部下たちも次第に慣れてきて、それまで話題にしていなかった趣味の話や、プライベートの話などで盛り上がることも多くなりました。

 

すると、徐々に部下から相談を受けることが多くなり、一緒に考える機会が増えました。

 

実績は相変わらず低調だったのですが、焦る気持ちをぐっと堪え、前を向いて頑張ろう、元気だけは失わないようにしようと言い続けました。

 

そうやって頑張っていたら、ある月いきなり実績が全国上位に躍り出ました。

 

結果を知らされ、私も、部下たちもビックリして、何かの間違いじゃないかと思ったほどです。

 

それ以来、今日まで、多少の上下変動はあるものの、実績は全国上位を維持できています。

 

それから少しして、事務の女の子からこんなことを言われました。

 

「今だから話せますけど、前はみんなマネージャーと同じ空間にいるのが嫌で、営業に行くとか言って、ファミレスでコーヒー飲んでたんですよ。私たち事務員はそれができなかったから結構辛かったんですけど、今はマネージャーと同じ空間にいるのが楽しいです」

 

そうか、そうだよな。

 

ピリピリしてる上司と同じ空間にいるのは辛いし、嫌だよな。

 

いつ怒られるか分からない、何を言われるか分からない、そんな状況で良い仕事はできないよな。

 

それが低調な実績の原因だったなんて、もっと早く気付いていれば良かったんだけどな。

 

彼女の話を聞いて、苦笑いしながらそんなことを頭に浮かべました。

 

お断りしておきますが、だからと言って、全てが順風満帆ではないんです。

 

実績だっていつ下がるか分かりませんし、部下にしても、みんなが私についてきてくれているわけではありません。

 

私とソリが合わずに辞めていった部下もいますし、個人の実績が上がらず辞めざるを得なかった部下もいます。

 

私も人間なので、時には感情が表に出てしまい、それが原因で辞めた部下もいます。

 

ただ、私は自分の意見を無理やり押し付けるつもりもありませんし、意見が合わない部下を虐げようとも思いません。

 

例え、私とは違う意見であったとしても、部下なりに考えたことなのであれば、頑張ってやり抜いて欲しいと思います。

 

私の役目は、部下たちが働きやすい環境を整えることと、彼らの背中を押してやること。

 

そして、彼らの努力を信じ、守ってやること。

 

そうしないと、部下は安心して働くことができませんし、やる気になれませんから。

 

ただし、私にできるのはそこまでで、それ以上のことはやりません。

 

部下たちに過剰な期待もしませんし、努力を強く求めたりもしません。

 

そんなことをしてしまうと、また、部下たちを支配していた自分に戻ってしまうからです。

 

それに、そうしない方が、彼らは彼らなりに精一杯頑張ってくれますし、実績も上がります。

 

私は私で、ついつい入りそうになる肩の力を抜き、自分自身のエゴと忍耐強く向き合い、日々、自分をマネジメントすることに努めています。

 

これが、今の私のマネジメントの流儀です。

 

今日、私の話を聞いて共感された方もいれば、何も得るものが無かったと思われた方もいらっしゃるでしょう。

 

そして、否定的な感想をお持ちの方もいらっしゃることでしょう。

 

以前の私なら、皆さんに自分の考えを分かって欲しいと強く思っていたかもしれません。

 

皆さんに私の思いが伝わるよう、もっと熱く、もっと一生懸命に話をしていたと思います。

 

でも、これは私流のマネジメントであって、それを皆さんがどのように感じられるのかは、皆さんご自身がご判断されたら良いと思います。

 

もし、何かの参考になるようでしたら幸いです。

 

ご静聴、有難うございました。

 

―以上、マネジメント研修会より―

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